研究概要 |
原始惑星系円盤内では、初期に存在したと考えられる乱流がおさまると、やがてダストの沈殿が始まる。ダスト沈殿により、惑星形成の原材料となるダストが、最初に星雲ガスより分離される。ダスト沈殿は、惑星集積に先立つ重要な過程である。ダストは、初期のサブミクロンサイズのままであれば、沈殿に10^6年ぐらいの時間を要するが、実際には沈殿の途中で互いに衝突付着して重くなり、加速度的に沈降する。これまでの見積もりでは、沈殿時間は10^3年ぐらいとされている。この見積もりでは、ダストは常に球形をしていると仮定されている。衝突付着しても、2球が合体して「ダルマ」のようになるのではなく、ひとまわり大きな一つの球になると仮定されている。このような仮定は、液滴の場合には正しいが、固体のダストの場合には不適切である。 本研究初年度の本年は、沈殿中のダストの衝突付着において、ダストはフラクタルな形状で成長すると考え、沈殿時間やダストの最終成長サイズに、従来の見積もりとどの程度違いが生じるのかを調べた。フラクタル形状に関する仮定として、ダストは最初、フラクタル次元Dが2.1〜2.3で成長するとする。成長とともに内部の平均密度は下がるが、ある最小値(10^<-1>,10^<-2>,10^<-3>cm^<-3>)に達すると、フラクタル次元Dの回復が始まり、サイズが30cmに達するとD=3に戻るとした。このような仮定のもとで、ダストの沈殿時間やダストの最終成長サイズを再評価した結果、ダストのフラクタル形状は比較的初期の段階だけで維持されるに過ぎず、沈殿時間や最終成長サイズは、フラクタル形状を考慮しなかった従来の見積もりよりも幾分大きくはなるが、さほど大きなちがいはないと言うことが明らかになった。
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