1. フラクタルな形状をしたダスト粒子の沈澱過程 従来の研究で見逃されていたダスト粒子のフラクタルな形状を考慮して、原始惑星系円盤中でのダスト粒子の沈澱過程を詳細に研究した。初年度の研究で、フラクタルなダスト粒子の沈澱時間・最終成長サイズは、フラクタル性を考慮しなかった従来の研究結果と大きな差異のないことが明らかにされた。2年次の研究で、その理由が明らかになった。ダストがフラクタルな形状を保ちながら成長を続ける初期段階では、沈澱はほとんど進行しない。サイズは大きくなるが、沈澱は顕著でない。この時期のダスト粒子の振る舞いは、フラクタル性を考慮しない場合と大いに異なる。しかし、成長したダストが、より小さなダストとの衝突付着によってフラクタル性を失い始めると、急速に成長は減速し、他方、比重が大きくなることにより、沈澱は加速する。このような事情により、ダスト粒子の沈澱時間・最終成長サイズは、フラクタル性を考慮しない場合と著しい差異は無くなる。 2. ダスト層中のダスト粒子の振る舞い 沈澱により原始惑星系円盤の中心面に集積したダスト粒子のサイズは、10cmのオーダーである。従来の研究で、この程度のサイズの粒子は、カス抵抗の効き方が中途半端であるために軌道半径の減少が早く、約数千年で中心星に落下してしまくことがわかっている。この危険から逃れるために、「標準モデル」では、中心面に集積したダスト層は一気に重力分裂をおこし、微惑星を誕生させることになっている。しかし、私の研究では、10cmオーダーのダスト粒子でも中心星に落下する危険はほとんど無いことが明らかになった。ダスト層内では、ガスよりもダストが主要な物質であり、このことを考慮すると、カス抵抗は従来考えられていたよりも実はずっと弱いからである。このことは、ダスト層内でガス・ダストを2流体として扱うことにより、初めて明らかになった。しかし、本研究の目的である、ダスト層の重力分裂の可否については、まだ依然として結論がでていない。今後も研究を継続したいと考えている。 3. 連星系をなす星の周りのガス・ダスト円盤中でのダスト沈澱 連星系をなす星の周りのガス・ダスト円盤は、これまで考えられなかった新しい惑星系形成の環境として興味深い。このような円盤の輻射スペクトルの観測データを理論的に解析し、連星間距離の小さいものほど、円盤内でのダスト沈澱が起こりにくい傾向のあることを明らかにした。
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