研究概要 |
最近、多くの活動銀河核中にメガメーザー、ギガメーザーと呼ばれる強いメーザー源が発見されてきた。メーザー源の構造と運動に関するモデルを構築することができれば、それをVLBI観測によるデータと比較することにより、厚い分子トーラスに覆われた活動銀河中心核の構造と運動の詳細(銀河中心にある巨大ブラックホールの質量・メーザー源の運動の詳細、銀河までの距離など)を明らかにすることが可能となる。 従来、メガメーザー源(メーザー円盤)の構造・運動を調べた研究では、常に、円盤がケプラー回転していることが仮定されて来た。しかし、メーザー源の速度場は、メーザー円盤中に存在する大域振動による影響を受けるはずである。私たちは、メーザー円盤中の固有振動を数値的に求めることにより、円盤中には赤道面に対して対称な振動モード(eccentric mode)と反対称な振動モード(warping mode)が存在し、前者のメーザー源の速度場への影響はほとんど水平成分に限られ、後者の速度場への影響はほとんど垂直成分に限られることを見いだした(Okazaki,A.T.1997,in IAU Symp.No.184 on The Central Regions of the Galaxy and Galaxies,印刷中)。 さらに、私たちは、活動銀河NGC1068中心核のメーザー源の速度場が半径とともにケプラー則よりもゆるやかに減少しているのは、メーザー円盤中のeccentric modeの影響であることを明らかにした。メーザー円盤中のeccentric modeの影響を正しく考慮すると、中心の巨大ブラックホールの質量はケプラー回転を仮定した場合よりも約30%小さい10^7M_<【of sun】>となることも明らかになった(Okazaki,A.T.1998,in “Numerical Astrophysics 1998",印刷中)。
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