研究概要 |
近年、メガメーザー源を持ついくつかの活動銀河核に対して、VLBI観測によりメーザー源の位置・視線速度・視線速度変化率の分布が求められてきた。その結果、NGC4258のようにメーザー源がほとんどケプラー回転しているものはまれであり、ほとんどのメガメーザーではメーザー源の視線速度分布は単純なケプラー則には従っていないことが分かってきた。メーザー源は分子ガス円盤/トーラス中のもっとも密度の高いところに位置していると考えられるので、このことはほとんどの分子ガス円盤/トーラス中で速度場がケプラー回転からずれていることを示唆している。 この速度分布のケプラー回転からのずれは、分子ガス円盤/トーラス中の大域的m=1振動モードにより引き起こされる可能性がある。本研究では、この立場に立って、振動がメーザー源の位置・速度分布におよぼす影響を調べてきた。簡単な分子ガス円盤のモデルを用いてm=1振動の3次元構造を求めた結果、メーザー源がケプラー回転しているもの(NGC4258)では振動モードが赤道面に対して反対称になっており、ケプラー回転からずれた速度場を持つもの(NGC1068など)では振動モードが赤道面に対して対称になっていることがわかった。このモデル(大域振動モデル)は、赤道面に対して対称な振動モードによる摂動を受けている分子ガス円盤では、観測者から遠ざかる側に位置するメーザー源と近づく側に位置するメーザー源とでは、視線速度のケプラー回転からのずれ方が非対称になる(片方がケプラー回転よりも緩やかな勾配を持ち、他方がケプラー回転よりも急な勾配を持つ)ことを予言する。この非対称性がVLBI観測により検出されるかどうかが、大域振動モデルの適否を判断する鍵となるだろう[Okazaki,A.T.1998,in IAU Symp.No.194 on Activity in galaxies and related phenomena.Y.Terzian et al.(eds.)]。
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