いくつかの2型活動銀河核で観測される強力な水メーザー放射の源は、銀河中心から0.1-1pcのところにあり、分子トーラスの内縁近傍に位置しているのではないかと考えられる。メーザー源のこう像と運動に関するモデルを構築することができれば、それをVLBI観測によるデータと比較することにより、分子トーラスに覆われた活動銀河核の構造と運動の詳細を明らかにすることが可能となる。そのために、本研究では、メーザー円盤中に存在する大域的固有振動がメーザー源の運動にどのような影響を及ぼすかを調べた、得られた結果は次の通りである。 1.円盤中には、密度の摂動が赤道面に対して対象な振動モード(eccentricモード)と反対称な振動モード(warpingモード)が存在する。Warpingモードでは速度場の摂動はほぼ赤道面と垂直になり、eccentricモードでは速度場の摂動はほぼ赤道面に平行である。 2.Warpingモードが卓越したメーザー円盤では、観測される位置-速度図とsystemic componentのvelocity driftはともにケプラー円盤の仮定が適用できる。このモードはNGC4258のメーザー源の位置および速度分布を良く説明する。 3.Eccentricモードが卓越している円盤では、観測者から遠ざかる側に位置するメーザー源と近づく側に位置するメーザー源とでは、視線速度のケプラー回転からのずれ方が非対称になる。NGC1068のメーザー源の位置・速度図に見られるケプラー回転からのずれは、このモードの影響であると考えられる。
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