本年度の研究成果は次の3つにまとめられる。 1. Ia型超新星の進化モデル 昨年度確立した連星系の進化パラダイムに基づき、optically thick windを組み込んだ連星系の進化モデルを展開した。その結果、Ia型超新星となる主な道筋には2種類あること(伴星が赤色巨星と主系列星の場合)がわかり、それぞれの詳しい進化経路を示すことができた。また超新星になる直前の天体として、回帰新星が位置付けられ、それも対応する2通りのものがあることがわかった。Ia型超新星の発現率は宇宙の化学進化によって変わり、それは観測事実をよく説明できることもわかった。 2. 新星 白色矮星の上でヘリウムの不安的核爆発が起きたとき、どのくらいのガスが飛び散るかをoptically thick wind理論によって計算し、白色矮星の成長率を求めた。これは回帰新星でみられるはずの現象であるとともに、Ia型超新星の進化モデルの基本物理を提供する。 3. 大質量星の内部構造 大質量主系列星の内部構造を求め、重い星は、コア・ハロー構造をもち外側部分がふくれた構造をしていることを示した。この効果のために主系列は従来の予想と異なり、上部が低温の方に曲がる。この効果は星の種族が若いほど顕著である。最近ぞくぞくと発見されている非常に重い星(>120太陽質量)の観測値はこの理論と一致する。
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