研究概要 |
本年度の研究成果は次の2つにまとめられる。 1.回帰新星の光度曲線の精密化 回帰新星の光度曲線を精密化し、白色矮星の光度だけではなく、アクリーションディスクと伴星に白色矮星からの光が照り返されて増光する効果までふくめたモデルをつくり、連星系の回転による光度変化も考慮して、いくつかの回帰新星について非常に詳しいモデルを作った。その結果、アクリーションディスクの大きさや傾き、伴星の大きさなど、白色矮星の質量など、連星系のパラメターをこれまでになく詳しく求めることができた。これまで再現できなかった爆発後期の光度変化も再現できるようになり、光度曲線解析の精度を格段にあげることに成功した。 2。重い白色矮星の確認とIa型超新星の親星の関係 上記による詳しい光度曲線解析により、回帰新星U Sco,T CrB,RS Oph,V394CrAの白色矮星は、チャンドラセカール限界質量ぎりぎりに重い(太陽質量の1.35〜1.377倍)ことが確かめられた。また、それぞれの場合について、質量移動率や白色矮星の外層大気の質量、爆発時にふき飛ぶ割合などが求まり、これらの白色矮星は現在新星爆発のたびに重くなりつつあることが確認できた。つまりこれらの回帰新星はIa型超新星の親星の最有力候補である。さらに、蜂巣らの連星系進化モデルにあてはめると、これらの回帰新星は、Ia型超新星への2つの道すじにそれぞれあてはまり、超新星進化モデルの正しさをうらずけるものともなっていることがわかった。
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