これまで加藤が新星の光度曲線を理論的に解明するために発展させてきたOpticallythick wind理論は、本研究で新星の理論分野の域をこえて応用されるようになり、大きな飛躍をみたと言える。本研究の主な成果は次のようにまとめられる。 (1)新星の光度曲線解析 古典新星の光度曲線解析により白色矮星の質量を求める新しい方法を確立した。また回帰新星については白色矮星表面のほか、白色矮星に部分的に照らされたアクリーションディスクと伴星の寄与も含む精巧なモデルを確立し、観測される複雑な光度曲線を再現できた。その結果、回帰新星を起こす白色矮星は非常に重く、チャンドラセカール質量ぎりぎりであること、白色矮星は新星爆発を繰り返すとともに重くなっていることもわかった。 (2)Ia型超新星の起源 optically thick windが起こると、それによる角運動量と質量の変化が連星系の進化を決める。これは従来の連星系の進化の道筋を大きく変えるものであった。このwind効果を連星系の進化に組み込むことにより、これまで不明であったIa型超新星に至る道筋を新しくみつけることができた。それは2つあり、超軟x線星型と共生星型である。 (3)回帰新星とIa型超新星との関係 回帰新星の光度曲線解析から連星系パラメターがかなり正確に求まり、それらの量から、回帰新星が2つのサブグループに分類でき、それぞれが上記(4)で述べた2つの道筋の最終段階にぴったりあてはまることがわかった。つまり、U ScoやT CrBなどは、Ia型超新星の親星の最有力候補であることが定量的に結論される。 (4)超大質量主系列星の構造 大質量主系列星の構造を求め、質量が大きいと星はコア-外層構造をとるため半径がふくれることを示した。この効果は銀河やマゼラン銀河での大質量星の観測の傾向にはっきりあらわれていることもわかった。
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