この研究の目的は、非可換空間上での場の理論を構成し、その物理的振る舞いを解析することにある。この科研費による4年間の研究では、特に非可換空間の例として、非可換球面を取り上げその上での場の理論の構成と解析を中心に行った。非可換球面は、球面の関数代数を量子化することによって得られる空間である。我々は、まずこのような空間上の微分幾何学を構成するのに必要な要素を与え、この結果を使いConnesの意味での非可換微分幾何学を構成することから始めた。(論文1)この応用として実際に非可換球面上のスカラー場の作用を与えた。(論文2)我々の最も興味のあるのは、非可換球面上のゲージ理論であるが、その構成には非可換微分幾何そのものの更に詳しい解析が必要になる。論文3ではそれを実行しU(1)ゲージ場の作用を書き下し、構成された場の理論の可換極限を調べた。特に、ゲージ理論においては、可換な理論には現れない種類の項が現れ、その構造を分析することにより、非可換球面へ拡張されたゲージ理論の分類とその可換極限との対応を解明した。 一方、反対称テンソル場の下で、トーラスにまきついたD-braneが非可換性を示すことが知られている。平坦な時空であるトーラス以外で、D-braneが非可換性を示す例を構成し、その性質を調べることは、弦理論と非可換幾何学との関係を調べる上でも興味深い問題である。このような観点から、群多様体上のD-braneを調べ、boundary stateの構成し、群がSU(2)の場合のworldvolumeの具体的な形状を決定した。特に、群多様体の体積が有限の場合、弦の効果により、D-braneが拡がりを持つことを示した(論文5)。このD-braneはある極限のもとで我々が研究対象にしている非可換球面上のゲージ理論で表現されるため、その関係を現在研究中である。
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