銀河団による新しい重力レンズ現象とそれを用いた宇宙定数の観測

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09640332
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 二間瀬 敏史 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20209141)
• 研究分担者: 服部 誠 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90281964)
• キーワード: 銀河団 / 重力レンズ / ウィークシェア / ダークマター / 宇宙定数 / アインシュタイン・リング

研究概要

銀河団による重力レンズ現象として代表的なものは、背景の特定の銀河が大きくゆがめられてアーク状に見える巨大アーク像と、多くの背景銀河がわずかにゆがみ全体として銀河団のまわりにウィークシェアと呼ばれる系統的なゆがみのパターンをつくる現象があげられる。本研究では、これら2つの重カレンズ現象を研究するとともに、形はほとんどゆがまないが明るさが大きく増幅される重カレンズ現象が存在することを発見して、それをグラマーと名づけた。
今年度は特にウィークシェアに着目し、アーベル370などの銀河団に対して観測されたウィークシェアから銀河団の質量分布を再構成し、それが光の分布とよい相関があることを示した。これはダークマターと光を放つ通常の物賀分布との関係を知る手がかりになる。またウィークシェアを用いてスバル望遠鏡による光学的には同定の難しい銀河団のサーベイを行なうことを提案した。
グラマーに関しては、銀河団の質量分布や赤方偏移などのパラメータを決めることができれば、イメージの源である銀河の赤方偏移の分布は宇宙論的パラメータの一つである宇宙定数に強く依存することが分かった。したがってもしグラマーが観測できれば、宇宙定数に対する制限が得られることを示した。また本研究の一端としてアインシュタインリングと呼ばれる重力レンズ現象を用いても宇宙定数の制限がえられることを示し、いくつかの特定の系をスバル望遠鏡を用いて観測することを提案し、それらは今後、実際に今年度あるいは来年度にスバル望遠鏡で観測されることになった。この観測によってこれまで観測が困難だった宇宙定数の値に対する制限が得られることが期待される。

研究成果

• [文献書誌] T.Hamana,H.Martel & T.Futamase: "Statistics of Weak Gravitational Lensing in CDM Models"Astrophysical Journal. 529. 56-68 (2000)
• [文献書誌] T.Futamase & T.Hamana: "Constraint on the Cosmological constant by Einstein Ring system"Progress of Theoretical Physics. 102. 1037-1041 (1999)
• [文献書誌] M.Takada & T.Futamase: "How is the local-scale instability influenced by the surrounding structure?"General Relativity and Gravitation. 31. 461-486 (1999)
• [文献書誌] K.Umetsu,M.Tada & T.Futamase: "Cluster Mass Reconstruction by a Weak Shear Field"Progress of Theoretical Physics, Supplement. 133. 53-84 (1999)
• [文献書誌] M.Chiba & T.Futamase: "Statistics of QSO Lensing and Cosmological Parameters"Progress of Theoretical Physics. Supplement. 133. 115-135 (1999)
• [文献書誌] E.Komatsu & T.Futamase: "Complete Constraints on a nonminimally coupled chaotic inflationary scenario"Physical Review D. 59. 1-7 (1999)