研究課題/領域番号 |
09640337
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米谷 民明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10091521)
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研究分担者 |
加藤 光裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80185876)
風間 洋一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60144317)
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キーワード | 弦理論 / 超弦理論 / 量子重力 / 大統一理論 / 場の量子理論 / 行列模型 |
研究概要 |
弦理論の背後に潜む原理の探究:米谷は以前から追求している弦理論の短距離時空構造を特徴づける一種の不確定性原理についての研究をさらに進めた。typeIIA弦理論の観点から最も基本的な自由度とみなされるD-粒子の力学のうちもっとも重要な定性的性質である11次元プランクスケールl_p〜g_s^<1/3>l_sが、確かに時空の不確定性原理と通常の量子力学のハイゼンベルグの不確定性原理を組み合わせることによって導けることを示した。さらに、typeIIB弦理論の立場から基本的とみなされるD-インスタントンの力学に対する自然な模型である行列模型も時空不確定性原理から導けることを示した。その他、時空不確定性原理の立場からのD-粒子の力学に対する超対称行列模型の高次補正の構造を分析、重力子超多量項の真空への凝縮機構の定式化、などについて研究を進めた。 D-粒子の力学の解析:風間は、11次元M理論の基本構成要素と考えられる点状のD-brane(D粒子)の量子ダイナミックス(具体的には散乱過程)を研究した。D粒子の散乱については、これまで無限に重い古典的粒子としての取り扱いしかなされておらず、従ってD粒子の反跳効果が本質的である非前方散乱振幅は知られていなかったが、風間は平野と共に経路積分を用いて量子化された有限質量のD粒子と通常の弦の励起状態との一般的な散乱振幅を計算することに成功した。さらに風間は量子化された二つのD粒子同士の散乱振幅を、経路積分、境界状態頂点関数、及び開弦チャンネルにおけるオペレーター形式、という三種の異なる形式で計算する方法を開発した。こうして得られた結果はM理論のミクロな定式化を探る上で重要な情報を与える。 曲がった空間におけるD-粒子力学と位相的行列模型の研究:加藤は、まずD-braneの力学を調べるための手掛かりとして曲がった空間上の曲がったD-braneについて調べた。特に群多様体上の可能なD-braneを分類し、弦との相互作用を記述する境界状態を一般的に構成した。またT-双対性の下での変換規則についても明らかにした。この方法は、保存流の自己同型写真像に基づいており適応範囲は広い。次に加藤は、時空の非可換性を出発点にして弦理論の非摂動的な定義を与える一つの試みを提唱した。この考察によればIIB超弦理論の非摂動的定義として先に提唱されていたIIB行列模型の背後には、8元数に基づく自己双対方程式が存在している事が明らかになった。また、12次元の理論との関係も示唆されるが、その意味付けは今後の課題である。
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