^<132>Osの原子核に見られる、高いK=8^+バンドの異常な振舞を理論的に解析するために、回転運動に伴う励起機構としてワブリング運動の理論を、使って解析した。この、バンドの異常な振舞として、符標逆転現象が挙げられるが、これはバンドヘッドが8なので、偶数スピンがエネルギー的に優位であることが期待されるのに、実際の観測では偶数スピンのエネルギーが高い。そのスピン領域では、yrastバンドがバックベンドしていて、符標逆転現象はちょうどその領域からはじまっている。このことは基底バンドと回転整列バンドとの交差領域に、K-バンドが交差しK-バンドの偶数スピン状態が、基底バンドより回転バンドと強く相互作用し、K-バンドの偶数スピンを下から押し上げていると考えれば、実験を良く説明出来る。すなわち、この原子核のでは3つのバンドが同じ角運動量およびエネルギー領域で交差する物理的猫像が最もよく対応していると考えられる。このバンド間相互作用を微視的な記述で再現するには、回転軸方向に回転整列したバンドと変形の対称軸方向に整列した高いK-をもったバンドをテイルトした回転軸で回転する状態を量子力学的に重ね合わせる、生成座標の方法が適してる。これは正にワブリング運動を量子力学的に取り扱うことになる。 以前の生成座標の解析では、角運動量の射影をしなかったので、生成座標の方法で現われる、特徴的な積分方程式の収束性が悪かった。今回は3次元自己無撞着なクランキング方法で生成した波動関数を決まった角運動量状態に射影して、角運動量の固有状態である試行関数を、生成座標の波動関数として適応した。3次元クランキングの波動関数から角運動量を射影するには3つのオイラー角についての積分を遂行しなければならず、重なり積分の位相決定の困難があったが、解析接続の方法によってその位相を決めて積分に成功した。スペクトルは実験とは完全には対応しなかったが、定性的な傾向が再現された。定量的に実験と合すには粒子数の射影も必要である。
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