研究概要 |
軽核領域の中性子過剰核では陽子はp殻が、中性子はsd殻がアクティブになっており、このような状況に起因すると思われる特異な現象が幾つか見出されている。本研究ではその微視的構造を明らかにするため、入射核破砕反応によって得られるスピン偏極した不安定核ビームを利用して磁気モーメントの測定を行なった。昨年度行なった^<18>N(T_<1/2>=624ms,I^X=1^-)の磁気モーメント測定に引き続き、今年度は^<18>Nの電気四重極モーメントの最終決定を行なった。 理化学研究所リングサイクロトロンからの入射エネルギーE/A=110MeV/uの^<22>NeビームをC標的に照射し、入射核破砕反応によって放出される^<18>Nを入射核破砕片分離装置RIPSによって分離・収集した。こうして得られた偏極不安定核をストッパー中に停止させて、崩壊の際に出されるベータ線の角度分布の上下非対称度を指標として核磁気共鳴の観測を行なった(β-NMR法)。今回、断熱磁場回転による新しい偏極測定法を開発して、これによって核磁気共鳴測定に先だち^<18>Nの偏極度を最適化した結果、放出角θ=3.5±1.0゚、出射運動量p=8.07-8.32GeV/cにおいて偏極度P=2.2±0.7%を得た。次に^<18>Nの電気四重極モーメントを測るため、植え込み試料としてMgを採用してβ-NMR測定を行なった。その結果、観測された共鳴周波数より四重極結合定数を|eqQ(^<18>N)/h|=73.2±1.4kHzと決定し、これより四重極モーメント|Q(^<18>N)|=12.3±1.2mbを得た。この結果と殻模型計算との比較から、^<18>N核においては中性子の有効電荷が安定核領域で知られている値より有意に小さくなっていることがわかった。
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