研究概要 |
(l) (細谷) 回転する大質量星による重力波の回折・干渉効果 重力波は物質との相互作用が弱いためにコヒーレンスが保たれている。重力波による回転する大質量星による回折・干渉効果を調べた。それによると、干渉パターンが回転のない場合に比べてちょうどカーパラメータ分だけ視線と垂直の方向にシフトする。このことは直接観測に関わるわけではないが、アハロノフ・ボーム効果と類似の現象なので興味深い。 (2) (細谷) 裸の特異点を波動で見る宇宙検閲仮説は裸の特異点が物理的な過程では生じないことを予想している。一方、時空の特異点は測地線が不完備であることにより定義されている。これは、物理的には粒子の運動が途中で予言不可能であることを示す。しかし、現実には物質は量子場により記述されるのでこの定義は充分物理的とは言えない。そこで、物理的に用意できる有限のエネルギーの波動で時間的な特異点をプローブすることを考えた。数学的には波動の関数空間をソボレフ空間にとり、時間推進演算子が特異点の位置で自己共役であるかどうかを調べた。曲率の発散があまり強くない場合には時間推進演算子が特異点の位置で自己共役であり、波動の時間発展は与えられた有限エネルギーの初期値にたいして一意的に決まることが示された。これは、波動で見る限り「特異点」は全く無害であることを意味する。 (3) (石原) ドメインウォールのような拡がりを持つ物体を含む時空は,物体のエネルギーが超曲面上に集中しているので,そこで曲率が発散し,時空は滑らかさを失う。この超曲面は時空に埋め込まれた特異な部分多様体とみなすことができ,時空は非自明な大局的構造をもつ。この時空において,重力相互作用を考慮した上で拡がりをもつ物体の運動を記述する方程式を導き,重力波の生成および伝播を研究した。
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