研究概要 |
ホーキングとペンローズによる有名な特異点定理は、エネルギー密度が正であるというような妥当な物理的な条件下では時空に必ず特異点があらわれることを示しているが、その特異点なるものは測地線の不完備性といういわば古典的な粒子の運動に則して定義されたものであった。特異点が生じるような高密度、高エネルギーの状況では、量子力学あるいは量子場の理論的効果が重要と思われるので、特異点定理は物理としては十分満足のいくものではない。 本研究では、特異点を探るプローブとして粒子ではなく波動を考えて、従来の意味の特異点がはたして物理的に困るものであるかどうかを検証した。すなわち、有限のエネルギーを持つ波動の伝搬が、因果的に記述できるかどうかを特異点近傍に注意を払って調べた。その手法として、関数解析学における自己共役拡大を用いた。 結論としては、少数の例外を除いて多くの時間的な(従来の意味での)特異点は、有限のエネルギーを持つ波束でプローブすれば特に問題のある点ではないことになった。さらに、特異点が無害であるための一般的な判定基準も与えた。(細谷)ドメインウォール,ストリングの自己重力を考慮した上でのダイナミクスを研究した。非一様宇宙の光の伝播を調べ,距離,赤方変位の観測への影響を調べた.(石原)
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