細谷: 1)一様でコンパクトな宇宙の大域的分類を行い、その力学を明らかにした。その方法としてサーストンによる3次元幾何学を若干一般化したものを用い、3次元双曲空間以外について完全に分類し、力学的自由度を局所曲率に関するものと、大域的なタイヒミュラー変形の自由度にわけて考え、すべて数え上げた。さらに、タイヒミュラーパラメタの時間発展をアインシュタイン方程式の解を用いて表すことに成功しハミルトン形式が可能になった。 2)宇宙論の場合にアインシュタイン方程式へ繰り込み群の方程式を応用した。一様等方宇宙で物質が完全流体の場合と球対称非一様宇宙でしかも物質が圧力のない流体の場合について、繰り込み群の固定点及び固定点近傍の振舞いを調べた。 3)重力波による回転する大質量星による回折・干渉効果を調べた。それによると、干渉パターンが回転のない場合に比べて、丁度カーパラメータ分だけ視線と垂直の方向にシフトする。このことは直接観測にかかるわけではないが、アハロノフ・ボーム効果と類似の現象なので興味深い。 4)有限のエネルギーの波動で時間的な特異点をプローブすることを考えた。数学的には時間推進演算子が特異点の位置で自己共役であるかどうかを調べた。曲率の発散があまり強くない場合には時間推進演算子が特異点の位置で自己共役であり、波動の時間発展は与えられた有限エネルギーの初期値に対して一意的に決まることが示された。これは、波動で見る限り「特異点」は全く無害であることを意味する。 石原: 1)宇宙のトポロジカルな欠陥であるドメインウオールの力学を調べた。特に球対称の模型でドメインウオールの運動の力学的な自由度は重力波の自由度に吸収されると言う結果を得た。同様の結論は以前石原達が面対称の倍に得ているので、これとあわせると南部後藤型のドメインウオールには独立な力学的自由度はないと思われる。 2)非一様宇宙の光の伝搬を調べ、距離、赤方変移の観測への影響を調べた。
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