最近、原子核に2重大共鳴状態が存在することが実験的に明らかにされた。有限多体量子系の巨大共鳴の研究は原子核のみならず、実験技術の進歩により、原子、アトミック・クラスター、ボーズ・アインシュタイン凝縮系と広がっているが、2重巨大共鳴状態の存在が明らかにされたのは、原子核においてのみである。従って、今後の他の量子系での研究にとっても重要な研究対象であるが、理論と実験の間には大きな違いがあることが判明した。原子核の2重巨大共鳴状態は、相対論的高エネルギー重イオン反応によってクローン励起されるが、その励起強度に対する実験値は種々の模型による計算値の数倍に達していることが示された。原子核の基本的な集団運動状態に対する理論値と実験値の違いは、従来の原子核理論にとっても、深刻な問題である。我々はこの問題を解決するために模型に依らない理論計算をすることに成功した。我々は2重巨大共鳴状態の励起強度には模型に依らない和則が存在することを示し、その強度はよく知られている(1重)巨大共鳴状態の励起強度で決まってしまうことを明らかにした。その結果、理論と実験値の食い違いは、少なくとも原子核構造に関する理論によるものではないことが示され、現在、相対論的重イオン反応機構の再検討が望まれているところである。 2重巨大共鳴状態の励起エネルギーと減衰幅についても、ほぼ模型に依らず理論値を求めることが出来、この二つの物理量については実験値と良く一致することを示した。
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