研究概要 |
研究の目的は1.2重巨大共鳴状態の構造を明らかにすること、2.不安定核の巨大共鳴状態の研究、3.マイクロクラスターのミー・プラズモンの研究であった。1,3については大きな成果が得られたが、2については実験的研究が遅れており、期待された結果を得ていない。しかし、巨大共鳴に関する本研究により、予想外の成果も得られた。これらを含め以下にまとめる。 1.2重巨大共鳴状態の発見は90年代の原子核物理最大の発見の一つであるが、我々はその励起強度に対する模型に依らない和則を求めることに成功した。これは、通常の巨大共鳴に対する有名なThomas-Reich-Kuhn和則に対応するものである。 2.ミー・プラズモンの幅はクラスターのサイズに反比例するというのが長年の定説であった。我々はより厳密な計算を行い、サイズの平方根に反比例することを示した。実験的検証が待たれる。 3.ガモフ・テラー巨大共鳴の励起強度が実験的に確定されたが、我々はその結果をもとに、長年不明であったスピンの自由度に依存する原子核のランダウ・ミグダル パラメータの値を確定した。その値は従来予想されていたものと大きく異なり、今後のスピンに依存する原子核や中性子星の研究の基盤となるであろう。 4.原子核を相対論的多体系として理解すべきか、或いは従来通り非相対論的模型で十分であるかは、現在の原子核研究の大きな課題である。我々は、原子核の単極子巨大共鳴状態を相対論的模型で記述する場合、反核子の自由度が必要であることを解析的に示した。この結果によって相対論的模型と非相対論的模型の違いが見いだせる可能性がある。
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