本研究計画は、高エネルギーでのQCDの振舞いを摂動・非摂動の境界領域にまで踏み込み、そのダイナミックスを解明すると同時に、超対称ゲージ理論の双対性および2次元可解系との関連を明らかにするのを研究の目的とする。当該研究計画の初年度である平成9年度は、高エネルギーQCDと超対称性理論の諸側面について研究を遂行した。前者については、摂動QCDに基づき、核子のスピン構造関数に登場する高次ツイスト演算子のくりこみの解析を、広島大学のグループと共同で調べた。口頭では、7月に米国ブルックへヴン国立研究所での理研・BNL研究センターワークショップで発表した。また、10月に広島市で開かれた国際研究集会に出席し研究・討論を行った。一方、超対称統一理論において超対称性が部分的に破れる場合の低エネルギーでの有効相互作用を調べ、特に、N=2超共形対称性が、N=1超共形対称性またはN=1超ポアンカレ対称性に自発的に破れる場合について非線形実現の方法を用いて有効相互作用ラグランジアンを求めた。この研究成果は、論文として発表し(phys.Lett.B420(1998)69-76)、また口頭では昨年9月に東京都立大学での物理学会と、11月に京都大学基礎物理学研究所での研究会で発表した。計画の実施においては、国内各地とりわけ、東大・広大の関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。予算執行としては、国内のQCDおよび超対称可積分理論の研究者研究者との研究連絡や情報交換のための旅費の他、資料整理ための謝金、論文作成と数式処理のために必要なパーソナル・コンピュータ等を購入した。
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