研究概要 |
本研究計画は、高エネルギーでのQCDの振舞いを従来の摂動論的アプローチに留まらず、摂動・非摂動の境界領域にまで踏み込み、そのダイナミックスを解明すると同時に、超対称ゲージ理論の双対性および2次元可解系との関連を明らかにするのを研究の目的とする。当該研究計画の第2年度である平成10年度は、初年度の成果に基づき、さらに高エネルギーQCDと超対称性理論の諸側面について研究を遂行した。前者については、摂動QCDに基づき、仮想光子のスピン構造関数のQCDによる高次の効果を、横浜国立大学の佐々木賢教授と共同で調べ、論文として発表した(hep-ph/9812520,Phys.Rev.D掲載予定)。口頭では、10月に秋田大学で開催された日本物理学会において発表した。一方、超対称統一理論において超対称性が部分的に破れる場合の低エネルギーでの有効相互作用を調べ、特に、N=2超共形対称性が、N=1超共形対称性またはN=1超ポアンカレ対称性に自発的に破れる場合について非線形実現の方法を用いて有効相互作用ラグランジアンを求めた。この研究成果は、論文として発表し(Phys.Lett.B420(1998)69-76)、また口頭では、7月に広島大学理学部において「N=2超対称性の部分的破れと非線形実現」という題名でセミナーを行った。計画の実施においては、国内各地とりわけ、東大・広大・横浜国大などの関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。予算執行としては、国内のQCDおよび超対称理論の研究者との研究連絡や情報交換のための旅費の他、論文作成と数式処理のために必要なパーソナル・コンピュータ等を購入した。
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