本研究計画は、高エネルギーでのQCDの振舞いを従来の摂動論的アプローチに留まらず、摂動・非摂動の境界領域にまで踏み込み、そのダイナミックスを解明すると同時に、超対称ゲージ理論の双対性および2次元可解系との関連を明らかにするのを研究の目的とする。当該研究計画の最終年度である平成11年度は、初年度および第2年度の成果に基づき、さらに高エネルギーQCDと超対称性理論の諸側面についてその総括の意味を込めて研究を遂行した。前者については、摂動QCDに基づき、仮想光子のスピン構造関数のQCDによる高次の効果を、横浜国立大学の佐々木賢教授と共同で調べ、論文として発表し(Phys.Rev.DおよびPhys.Lett.B掲載)。口頭では、4月にベルリン郊外のDESYで開催されたDIS99において発表した(Nucl.Phys.B.Suppl.参照)。さらに、11月に理化学研究所で開かれた環太平洋理研シンポジウムで光子のスピン関数とそのパートン分布のQCDによる高次の計算、またその因子化の処方依存性等について報告した。一方、超対称統一理論において最近注目を集めている、AdS超対称性につきその部分的に破れと南部・ゴールドストン粒子の有効作用を調べた。計画の実施においては、国内各地とりわけ、東大・広大・横浜国大などの関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。予算執行としては、国内のQCDおよび超対称理論の研究者との研究連絡や情報交換のための旅費・謝金の他、論文作成と数式処理のために必要なコンピュータ周辺機器を購入した。
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