当該研究計画では、高エネルギーでのQCDの振る舞いを従来の摂動論的アプローチに留まらず、振動・非摂動の境界領域にまで踏み込み、そのダイナミックスを解明すると同時に、超対称性可解理論の諸側面を解明することを目標に研究を遂行した。初年度は長対象性理論について、超対象性が部分的に破れる場合、とくにN=2超共形対称性が、N=1超ポアンカレ対称性に自発的に破れる場合について非線形の実現の方法を用いて有効相互作用にラグランジアンを求めた。一方、第二年度および最終年度は高エネルギーQCDにかんして、核子のスピン構造関数に登場する高次ツイスト演算子のくりこみの解析および仮想光子のスピン構造関数について研究を行った。特に最終年度は、偏極電子・陽電子衝突で測定可能な偏極した仮想光子のスピンに依存する構造関数を、高次項について計算し、光子偏極構造関数を求め、そのQCD和則を論じた。また仮想光子中のクォークおよびグルーオンのスピン依存分布関数を、さまざまなFactorization Schemeの場合にどのような振る舞いをするかを高次のオーダーで求め、そのScheme依存性を解析した。また一方、高エネルギーQCDの可能性に焦点をあて、超対称的なQCD高エネルギーでの2次元有効理論は何かについて検討し、その統一的理論を目指す試みに着手した。また、最近AdS/CFT対応で興味を持たれている拡張されたAdS超対称性の部分的破れを解析した。研究遂行において、東大・広大・横浜国大・理化学研究所またDESYの関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。これらの成果は物理学会、内外の研究所におけるシンポジウムで発表し、また別紙に掲げた学術雑誌に公表した。
|