今年度は昨年度の個別のデータ集積と解析をもとにして、今後建設したいと考えている大強度陽子線形加速器の概念設計について検討した。線形加速器の場合にはエネルギーの違いによって、加速管の構造を変えないと加速効率が悪いので構造を変えていく。そのためにミスマッチが起こる可能性は高いのでそれに対する配慮が必要になる。 サイクロトロンについては加速中のミスマッチはあまり問題にならないとされているが大電流加速についてはあまり検討されていない。そこで線形加速器との比較のために、サイクロトロンを大電流の極限までもっていくとビームの特性がどのように変化するか、それによって電流値の限界がいくらになるかについて、空間電荷効果を考慮して検討した。その結果、平均電流10mA程度までは加速可能なことが確認できた。これは10%のデユーテイの線形加速器ではピーク電流100mAの加速器に対応するので、線形加速器でサイクロトロンと競うとすればやはりミスマッチとハーローの発生に注意する必要があることがわかった。 大電流陽子線形加速器のシステム例としていくつかのものについてビーム加速特性などを解析した。その結果上述の程度であれば実用的にはミスマッチによる問題はそれほど大きくないと判断された。 いくつかの設計例についてはシカゴで開催された線形加速器の国際会議七LINAC98で発表された。
|