1) ミスマッチビームの作るハローの計算機シミュレーション 研究室の大学院生の池上雅紀が中心になって周期的集束力のある場の中で輸送されるビームの空間電荷による不安定性について1次元近似でのシミュレーションを行った。その結果、輸送システムとマッチしたビームではハローは発生しないが、ミスマッチしたビームの場合はハローが発生することが確かめられた。しかしこのハローは初期の位相空間分布の周辺から出たビームであり、途中で一度コリメータで取り去るとその後は発生しないことも確かめられた。これは大強度ビーム加速のための線形加速器にとって有望な性質であるが、シミュレーションは1次元の計算なので今後の詳しい解析が必要である。 2) サイクロトロンにおける空間電荷効果 線形加速器との比較のためにサイクロトロンのビームの空間電荷効果によるビームの性質の劣化についても検討した。その結果、線形近似の範囲では、500MeV-10mAの加速は、3次の高調波電場を使用すれば、可能であることが推定できた。ただし、非線形効果についてはさらに検討する必要がある。 3) マルチロッド高周波四重極(RFQ)線形加速器の設計および加速器駆動システム 研究室の博士研究員であるV.Kapinが中心になってマルチロッドのRFQの設計研究を行った。この加速管は独特の構造をしており、ビームがうねりながら加速されるため1本のチャネルのビーム透過率は50%以下だが、多数のチャネルがあるので全体としては通常のRFQよりビーム強度の大きい加速器となる。 また、将来の原子力システムとして加速器と未臨界集合体を組み合わせた加速器駆動システム(ADS)を京都大学原子炉実験所の将来計画案の一つとして提案した。
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