1)プラズマ遮蔽効果と異常J/ψ抑圧効果:CERNの重イオン衝突実験で最近観測された「異常なJ/ψ粒子の生成抑圧」がプラズマ遮蔽効果によって説明できるかどうか検討した。これまでにあった陽子・原子核衝突や軽イオン衝突のデータに見られたJ/ψ抑圧は、核物質中をJ/ψ粒子が通過する際、核子との衝突によって吸収を受けるという描像でよく説明されてきた。最近発見された「異常なJ/ψ抑圧」というのは、鉛・鉛衝突の際、従来の描像による予測から40%程度更に強い抑圧が見られたというのもで、既にいくつかのグループによって、クォーク・グルオン・プラズマができたものと仮定した簡単な幾何学的モデルで説明ができることが示されていた。我々の研究では、これらのモデルで仮定されていた、プラズマによる抑圧の「しきい値」が本当に必要かどうか、またその存在が理論的に根拠付けることができるかに焦点をあてて検討した。その結果、1995年にとられたデータに関する限り、しきい値の存在しないモデルでも、十分説明ができることがわかった。4月の学会で報告予定。 2)カイラル相転移の非平衡動力学:量子論的揺らぎの効果を取り入れたカイラル相転移の動力学の記述の研究を、変分法的アプローチで行った。温度ゼロでも対称性の自発的破れにともなって、凝縮中間子場の「集団運動」を考えることができ、それは最近「DCC(Disoriented Chiral Condensate)」というニックネ-ムで呼ばれているが、われわれは時間的に振動する「DCC」場の周期に量子論的効果による上限があることを発見した。現在論文執筆中。
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