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重イオン衝突でできた高温クォーク・グルオンプラズマの冷却の過程でカイラル対称性の自発的破れを伴う所謂カイラル相転移が起ることが予想されるが、この相転移を特徴づける秩序変数の運動方程式とその特殊解をQCDの有効理論である線形シグマ模型をもちいて汎関数シュレーディンガー描像の方法で調べた。以前から非線形シグマ模型の古典解として、カイラル空間における回転を伴う平面進行波がアンセルム・リシュキン解として知られていたが、我々はこの解にガウス近似による量子論的な揺らぎも取り込んだ解を作ることに成功した。我々の理論形式は原子核の集団運動の理論的記述と非常に良く似ており、量子力学の問題(原子核の回転)を場の理論の問題(シグマ模型におけるアイソスピン集団運動)に拡張したものになっている。この結果はPhys.Letts.B誌に発表した。またこの理論の有限温度への拡張も行なった。この結果は現在専門誌に投稿中。
もう一つの研究課題であるクォーク・グルオンプラズマ生成によるJ/ψ抑圧の研究では、プラズマ遮蔽効果のような集団的かつコヒーレントな効果とグルオンとの非コヒーレントな散乱による吸収の効果とが共存した場合を、非エルミート調和振動子模型をもちいて調べた。この模型は吸収へのカラー・トランスパレンシー効果が自動的に取り込まれるようになっており、これまでグラウバー近似で吸収断面積によって現象論的に確率過程的に記述されていた過程への量子論的な干渉効果の役割も調べた。この結果は現在投稿準備中。
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