量子重力、およびその発展形として超弦理論のソリトンとしていろいろな次元に広がりを持ついわゆるブレインというものが活発に研究されている。本研究ではブレインのdynamicsとして特にもっとも簡単な対象(0ブレイン)の運動を研究した。0ブレインのN体系の運動の方程式はU(N)の行列をベースにした行列模型で記述されていることが知られている。ここでNというパラメーターは11次元方向の運動量と解釈され、ラグランジアン自体は光錐ゲージをとったものであると考えられる。このため11次元空間の意味でのローレンツ対称性が明白ではなく、その検証は理論の整合性に関するもっとも重要なポイントであった。研究代表者は京都大学基礎物理学研究所の江沢潔氏、村上公一氏らとともに、この模型のローレンツ対称性を非常にあからさまな形で導いた。さらにそれを発展させて、この模型にあらわれるBPS状態がみたす一階の微分方程式を導きその一般解をもとめた。本来この模型はmembrane(膜)を記述すると思われていたが、BPS状態に限ると弦としての振る舞いが本質的であることをしてきた。また、この模型では5次元的な励起がソリトンとしてあらわれることが予想されていたが、納得行く形でその古典解が得られていなかった。本研究では、5次元的な励起がmembraneの端にあらわれるという性質を用いて開いた膜の運動を記述する新しい行列模型を提唱した。特にtensionがない弦のBPS状態を記述できたのは新しい発見であった。次にこの模型は膜を扱っていたが別のタイプの行列模型(IKKT模型と呼ばれるもの)では直接弦を扱うことが可能であるが、その模型で開いた弦を扱う方法も同様に開拓した。この模型はいわゆるDブレインを扱う場合に重要だと考えられている。あとこれは少し毛色が違うが、開いた弦で例外群などを記述しようと思うと三つ又の弦を導入しなくてはならないことが知られているが研究代表者は奥山氏とともにこの状態のBPS条件の簡単な導出方を発見した。
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