弦理論の非摂動論的な側面の研究の一つの方向性として最近幾つかの模型に現れるタキオン場の果たす役割が注目されている。例えば超弦理論においてD-braneとanti-D braneが並行に並んでいる系を考えるとその二つのブレインの間を結ぶ開いた弦にはタキオンモードが発生する。このタキオンは二つのブレインの系が不安定であることを示唆しており、そのタキオンについての安定な真空を探すと2枚のDブレインが対消滅した状態を与えることが予想されている。この問題に関連して本年度は次の3つの方向へ研究を進めた。 まずタキオンが現れる最も簡単な系としてbosonic stringを考え、対称性の破れに関連する一つのシナリオを提唱した。より具体的にはbosonic open stringは26次元では2^<13>=8192枚のD-braneを持たなければならないことが知られているが、これらのブレインの対消滅により10次元の時空では2^5=32枚のD-braneのみが生き残る真空が存在することを指摘した。これは超弦理論のもつ対称性と一致しており、bosonic弦と超弦のひとつのdualityを示す兆候ではないかという議論を行った。 次にD-braneの厳密な取り扱いとして境界状態を用いる方法が知られている。この方法をbosonic弦の場合に適用しtachyon凝縮が起るという力学的な側面が境界状態ではどのように記述できるかを明らかにした。特にtorusコンパクト化された理論とorbifold理論の双体性がその背景にあることを証明した。 またタキオン凝縮のもう一つの記述法として弦の場の理論の試みがある。これに関連して藤と共同でPermutation Orbifoldの上で定義された開いた弦のモデルについて境界状態などを定義し弦の場の理論との対応を考察している。開いた弦の場の理論は幾つかのタイプがあることが知られているがOrbifoldで記述されるのは光錐型のものである。
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