弦理論を重力理論としてみた場合時空の幾何学はEinstein理論に現れるRiemann幾何学とは大きく異なることが知られている。特にある特定の極限の元ではConnesが提唱した非可換幾何学が現れることが知られている。一旦時空を非可換化すると今までの場の理論で現れなかったような新しいタイプのソリトンが現れることが知られてきた。本研究ではこのようなソリトンの位相的電荷を非可換幾何学の立場でどの様に理解すべきかを考察し、数学で知られているC-代数のKホモロジーとの関連を指摘した。この考え方を弦理論に適応すると弦理論のソリトンであるブレインの電荷もやはり同様にK群を用いて分類できることになる。次にこの考え方を応用して非可換トーラスという比較的取り組みやすいが非自明な空間のK群が具体的にどの様に実現されているのかを弦理論の立場から議論を行った。 この非可換時空の概念は弦理論を通じて考え出されてきたものであるが、M理論という全ての弦理論を包括的に取り扱うフレームでこの非可換性がどの様に出現するかは理論的に挑戦するべき点が多い分野である。本研究では膜の端に現れる弦に注目し非可換弦を用いるとM理論の非可換性を記述すると考えられる体積を保存する微分同相群が容易に表現できることを示した。この結果は長い間疑問とされてきた南部括弧式の量子化の問題を解く重要なヒントを与えると考えられる。 また非可換空間の上にすむ弦は行列弦模型というもので記述されると考えられ、弦の場の理論の一つのアプローチとして有望視されている。本研究では開いた弦について行列弦模型を初めてあからさまに構成し、その多くの性質を解明した。
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