弦理論は重力を含む自然界における全ての力の統一理論として有望視されているが、これまでいくつかあった無矛盾な模型は全てM理論という11次元で定義された膜の理論から導かれることが予想されている。M理論は量子化の問題など理論的な困難が多いが本研究ではそのいくつかの側面について研究を行った。大きな項目をあげると(1)ローレンツ対称性の検証(2)境界を持つ開いた膜を行列模型としてどのように離散化し量子化をおこなうのか(3)弦理論のソリトンであるjunctionのM理論的再解釈(4)通常は弦理論の境界を用いて議論されている非可換空間のM理論への拡張。(1)については今のところ古典的な計算のみであり量子論的な計算が今後望まれる。(4)については体積を不変にする変換の量子論的な実現という意味で数理物理学としても興味深いと思われる。 弦理論が定義する時空はいわゆるリーマン幾何学とは根本的に違っており、ある極限ではConnesらが定義した非可換幾何学で記述されると予想されている。一旦空間を非可換化すると可換な理論では現れなかったようなソリトンが現れることがわかってきた。本研究ではこの非可換ソリトンのもつ幾何学的な側面をK理論という数学的な枠組みを通じて理解できるのではないかという提案を行った。またそれを拡張して非可換トーラス上に現れるソリトンの奇妙な振る舞いについて指摘を行った。また開いた弦を非可換時空で定義した場合、行列弦模型で記述されることがわかっているが、我々はその定式化を行った。
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