研究概要 |
窪田は大学院学生の横井とともに、N=2の超対称性を持った場の理論に関するSeiberg-Witten理論をさらに発展させるべく、次の研究をおこなった。すなわちmoduli空間の中で、共形対称性を持つ特別な点の近傍付近でのくりこみ群の流れ、とりわけベータ関数がゼロに近づく近づき方をくりこみスケールの関数として調べた。これはSeiberg-Witten理論の楕円曲線の縮退する点での可能な変形を分類すればよく、SU(2)ゲージ群でN_f=1、2,3の場合、並びにSU(3)ゲージ群でN_f=0の場合についてのべータ関数の振る舞いを決定した。また大学院学生唐山の協力を得て、two-Higgs doublet modelでのW^+_LW^-_L→W^-_LW^-_L,Z_LZ_Lの散乱断面積に対する輻射補正の数値計算も完成することが出来た。Super-Kamiokandeの実験データが発表されたことに関連して、田中は尾田、高杉、吉村とともに次の研究を行った。ニュートリノの質量を与える模型として、SO(10)SUSY-CUTを取り上げ、10次元ならびに126次元表現のヒッグス・スカラーとクオーク・レプトンが結合している場合を考察した。この場合、Dirac質量および右巻きのMajorana質量はクオーク・レプトンの質量で書き表され、シーソー機構が働く。ν_μ-ν_γの混合を大きくし、ν_e-ν_μの混合を小さくする解が可能であることを示した。またSuper-Kaminokandeのデータがlepton-flavorの保存則を大きく破ることを示唆しているので、田中は久野、野尻、清水とともに加速器実験でそのようなシグナルを得る可能性を探求した。とりわけμ^+μ^-、e^+e^-衝突器でsleptonが生成される場合、μ^+μ^-(e^+e^-)→τμ+4jets+(missing-energy)およびμ^+μ^-(e^+e^-)→τμl+2jets(missing-energy)という反応を数値的に調べた。その結果、ニュートリノの混合角や質量いかんによっては、極めて有意なシグナルを得られるという結果を得た。 中津は、最近注目を集めているWittenのM-theoryやいわゆるbrane-dynamicsに関して、韓国での冬の学校で講義を行った。また大学院学生の横井とともに、AdS空間の理論と共形対称性を持つ理論との対応関係を調べた。とりわけハミルトニアン形式での正準量子化、演算子の間の関係、真空状態の関係等々を明らかにした。
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