研究概要 |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)の真空は,最大可換(MA)ゲージでは,双対超伝導体とみなせることを格子QCDモンテカルロ計算等を用いて示した.即ち,MAゲージでは,「クォークの閉じ込め機構」は,カラー磁気単極子(モノポール)の凝縮による双対マイスナー効果によって物理的に説明できる.以下に関連する一連の成果を列挙する. (1)MAゲージでは,グルーオン場の非対角成分の揺らぎが最小限に抑えられ,系のグルーオン場は最大限アーベル的な様相を示す.但し,位相欠陥であるQCDモノボールの近傍には非対角成分が多く残留し,ある種の構造を有することを示した. (2)モノポール近傍での非対角グルーオンの残留という観点から,MAゲージでのインスタントンのモノポールとの局所的な相関を示した. (3)MAゲージでは,非対角グルーオンの絶対値が強く抑えられており,それを反映して,非対角グルーオンの位相が近似的に「ランダム変換」の様に振舞う.この非対角グルーオンの位相のランダム性が閉じ込め力に対するアーベリアン・ドミナンスの数学的な起源である. (4)格子QCDを用いてMAゲージでのグルーオン場の伝播関数を調べ,MAゲージ固定下の非対角的グルーオン場が1GrV程度の有効質量を有することを示した.これがMAゲージのQCDが示す長距離スケールでのアーベリアン・ドミナンスの物理的な起源である. (5)MAゲージにおいて出現するカラー磁気モノポールの凝縮を格子QCDを用いて数値的に検証した.「双対ウィルソン・ループ」という概念を提案し,その真空期待値からモノポール間ポテンシャルを数値的に導出し,湯川型ポテンシャルとの比較から0.5GeV程度の双対ゲージ場の質量を得た.
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