研究概要 |
素粒子の標準模型ではHiggs粒子による自発的対称性の破れの機構が本質的に重要であり,いまだ未確認のHiggs粒子が模型の最終的確立の鍵を握っていると言っても過言ではない。それ故,このHiggs粒子の起源を探る事によって標準模型を越えるより基本的な理論("新しい物理")への手がかりが得られる可能性が高い。実際,このHiggs粒子が内包するいわゆる(ゲージ)階層性問題の解決の試みから超対称性理論といった新しい物理の理論が考案された事は良く知られている。 本研究の主目的は,ゲージ階層性問題を解決する今まで知られていなかった候補の1つとして,高次元ヤング・ミルズ理論から出発してHiggs粒子を生成する模型を提唱し,その模型の性質を調べる事であった。我々の考案した模型では,Higgs粒子は高次元理論のゲージ場を起源とするため,ゲージ対称性の帰結としてHiggs質量の古典値がゼロであるばかりでなく,1ループ補正による2次発散も消えることを示した。この意味で階層性問題は解決する。なお、我々が指摘した高次元理論で階層性問題が解決しうる,という可能性は,最近,N.Arkani-Hamed,S.Dimopoulos and G.Dvali等によっても指摘されており,最近のいわゆるLarge Extra Dimensionの活発な研究につながっている。更に,ループ補正は有限ではあるが,コンパクト化する空間の大きさに逆比例したHiggs質量を生成する事がわかり,空間の大きさが小さい時にはこの補正は潜在的に危険であるため,これを回避するいろいろな可能性についても考察した。
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