研究概要 |
今年度は,物品購入,高電圧電源の製作,反射材の基礎的な特性,シミュレーションプログラムの開発を行ってきた。主な購入物品は,光電子増倍管,波長変換材,ハイブリッド光電子増倍管である。ハイブリッド光電子増倍管を動作させるためには,十数キロヴォルトの高電圧を印加しなければならないので,高電圧電源の製作も行った。反射材に関しては,アルミナイズッド・マイラー(薄いポリエステルの膜にアルミニウムを蒸着したもの),タイベック(高密度ポリエチレン繊維から作られた耐久性のあるシート状製品),ゴアテックス(テフロン系のシート)の三種類に対して反射光の角度分布を波長300ナノメーターと400ナノメーターで測定した。アルミナイズッド・マイラーは他の二つに比べ,あまり乱反射は起こさない。またタイベックとゴアテックスは乱反射を起こし,角度分布が似ていることがわかった。反射光の強度は他の実験グループによりゴアテックスの方が数パーセントよいことがわかっている。この実験結果を考慮に入れたシミュレーション・プログラムを開発し,5cm×5cm×50cmの水に対してチェレンコフ光による光量を調べてみると,乱反射がある方が光電子増倍管面で光量が多いという結果をえた。我々の実験では,値段の安いタイベックを用いることに決めた。また,シミュレーションでもテスト実験でも波長変換材を用いた方が光量の入射粒子位置依存性が小さくなるという結果を得た。シミュレーションとテスト実験で光電子数が一致しなかったが,これは光電子増倍管の出力から光電子数を算出する際の不定性と波長変換効率の不定性によるものと考えられるので,ハイブリッド光電子増倍管を用いればよりよく理解できる可能性がある。
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