微弱信号を捉える高性能CCDを供給しているメーカーは国内浜松ホトニクス社と英国EEV社がある。昨年度開発した高速駆動ボードは両社の製品に対応するよう設計してあり、これらを混在させて高エネルギービームに当て、飛跡検出能力の研究を行った。 結果として、高温での暗電流特性に若干の違いがあるものの、十分に低い温度(-15℃)では、位置分解能に顕著な差は見られず、2〜3μmの分解能を得た。 併行して大強度放射線を当て、性能劣化の度合いを調べた。CCDの性能の劣化は電荷転送中の電荷の減衰(CTI)の増加を招く。これを広い温度範囲(-100℃〜常温)にわたって測定する装置を開発し、放射線ダメージの状況を調べた。 まず、大強度電子線を当てたが、これは主にCCD表面にダメージを与える。表面での暗電流を抑えるため各社、駆動時のゲート電圧を反転させるといった特殊な技法を用いているが、ダメージを受けるにつれこの反転電圧を上昇させる必要があることがわかった。 CTIの温度依存性は生成されたtrap levelにより、異なる振る舞いをするが、精密なシミュレーションを開発し、実験結果がよく再現できることがわかった。また、新たな駆動方式を考察し、シミュレーションしたところ、放射線ダメージを受けた素子についても、常温(0℃以上)でCTIが十分低く押さえることが出来ることも見出した。 さらに、素子を高温(150℃)にさらすことにより、0.44eVのtrap levelを除去することにも成功した。これらの研究により、将来の電子陽電子衝突型直線加速器実験で予測される5x10^<11>/cm^2/yearの放射線被爆においても、CCD素子を飛跡検出器として利用できることに目処が立ちつつある。
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