平成10年度の研究は9年度の研究を継承するとともに主に次のようなテーマに関しての実績があった。 1) 中性子及び陽子崩壊線近傍の原子核の巨大共鳴に注目に、特に酸素の同位体での過剰中性子が双極子巨大共鳴にどのような効果があるかを鼓膜型により研究した。特に15MeN以下のピグミー共鳴と呼ばれる領域の反応断面積に注目し、その大きさが中性子によるスキン構造の増加とともに大きく増加することを示した。又、我々の計算は最近の^<18>Oの実験結果もよく再現することがわかった。 2) 陽子崩壊線近傍原子核のアイソスピンの破れはここ数年注目されており、特に中重核以上の原子核ではその割り合いが数%にも上昇することが指摘されている。我々はこのアイソスピンの破れの実験的検証としてのアイソスピン同位状態の中に注目し、そのアイソスピン依存性から我々の新しい理論の予言とよい一致を示していることがわかった。又、複合核等の有限温度ではアイソスピンの破れが回復し、復び良い量子数になることを理論的に示した。 3) 相対論的平均場近似は最近注目されており、特にそのスピン軌道力が非相対論的模型に比べ、崩壊線近傍原子核の一体場を良く近似することが知られている。我々はこのスピン軌道力の違いがどこから来るのかに注目し、その徴視的構造を明らかにした。
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