研究概要 |
本年度は,メタルクラスターの構造の殻模型による研究の為に必要な電子間有効相互作用を,G行列理論をもとにして数値的に求めた。この有効相互作用はかなり強い引力であり、大きな非局所性を持っていることがわかった。この電子間の引力は,負の誘電関数を用いて表現する事ができる。これまでは,誘電関数が負の値をとる場合の一般的な理論は存在しなかったが,我々は,それをghost plasmonという概念を導入して一般的に記述した。又,この一般的な理論を,時間に依存する局所密度近似(TDLDA,time-dependent local density approximation)を用いてバルクな系に適用し,その有用性を示した。次に,有効相互作用の非局所性を表すために,電子間のG行列を3つの独立な運動量の関数として一般的に求め,それを局所ポテンシャル部分と非局所ポテンシャル部分に分けた。一般的な手法では,非局所性を表す因子は,テイラー展開できて,いわゆる密度行列展開の形に表されるが,この場合は,非局所性が強すぎて密度行列展開が有効でないことが分かった。このために,ポテンシャルを局所ポテンシャルに非局所性を表す因子がかかった形で表示した。現在は,この非局所性(運動量依存性)により,光吸収により励起されるメタルクラスターの集団励起モードのエネルギーが,どの様に変更されるかを調べている。又,非局所性をもったポテンシャルをKohn-Shamの理論で導くためにエネルギー汎関数及び,その汎関数微分をどの様に扱えばよいかを理論的に調べている。
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