研究概要 |
場の理論は、latticc gauge theoryの立場でいうと格子化された時空点の各点ごとにfiber空間として内部空間を考えた相互作用をする無限自由度の力学系である。各素子がカオス的な運動を持つ大域的結合写像素子模型(Globally Coupled Map Lattice)は,この興味深い拡張であり,脳のパターン認識を集団同期モードの形成ととらえることを許す。我々は、ロジスティック写像からなるGCMLの乱流相,すなわち各素子の持つ非線形性に比べて結合定数が極めて小さい領域に着目して,系の平均場の2乗揺らぎ(MSD)の統計性を調べ次の興味深い結果を得た。 1. 乱流領域の中には実は周期性の高い部分領域が系統的に含まれており、そこでは平均場を通したごく弱い相互作用のために構成要素間の位相的な同期が起こり周期的な相互運動をする少数のクラスターが形成されることを見いだした。 2. 構成素子数の等しいp個のクラスターで相互に周期pの運動をする対称性の高い状態を考察し,この状態では平均場が揺らがないためGCMLの力学が構成要素の周期窓の力学に単純に帰着することを利用して,このような状態が発生しうるGCMLのパラメーター領域を特定する解析的な式を与えた。この式は,様々なパラメーターを持つGCMLの集合の中で同じダイナミックスに従うものを族として特定する役割を果たす.さらに数値解析により対称性の高い状態が我々の式の領域で形成されていること,隣接した結合定数がより大きい領域ではクラスターが減少しその非対称性のために平均場は高い揺らぎを持つことを,示した。 3. 素子数Nが10^4を超えた巨大GCMでは構成要素の無数の周期窓を系の集団運動が特に鋭敏に反映することを数値シミュレーションで示し従前GCMLで支配的であると考えられていた「隠れた相関」がMSD面の谷間領域に限定されていることを示した。これはカオス複雑系は熱力学的極限でも揺らぎを持ち続けること,それは構成要素の周期窓に起因することを示し,カオス複雑系の基礎に関わる重要な知見である。
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