本研究の対象は、平均場をとおして相互作用をさせた写像素子の結合模型でありニューラルネットの一つの基本系となるものである。各素子の非線形性を司さどるパラメータaが大きく、素子間の相互作用のパラメータεが小さい領域では、ナイーブには、各素子が独自のランダム運動を発現すると考えられるので、「乱流相」とよばれている。しかし、統計解析から、素子間に隠れた秩序というものがあることが報告され、異常統計をもつ系として着目されていた。本研究では、第1に乱流相全域にわたる詳細な素子のゆうぎの統計解析をおこない、模型の素子たちが自発的に位相同期をおこなって、少数のクラスターを形成し、それらのクラスターは互に一定の周期で運動をする現象がおこることを発見した。第2に、このような状態の基本は、周期3で個数3のクラスターが平均場を全くゆるがさずに相互周期運動をする状態-我々はp3C3 MSCA(Maximally Symmetric Cluster Attractor)と呼んだ-であることをみいだした。第3に、これらのMSCAが発現するには、模型の2つのパラメーターaとεが一定の条件をみたす必要があることを解析的に導いた。この条件は、素子の固有の周期窓が多数系の力学にフォリエイトする曲線群を与え、隠れた秩序はMSCAのためにひきおこされる。我々は、最後に、これらのMSCAが線形安定であることをしめした。
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