本研究では、国立天文台がハワイ島に建設し、1999年1月にファーストライトを迎えた大型望遠鏡「すばる」を用いて10GeV領域のガンマ線のチェレンコフ光観測を行い、この未知の領域を開いて天体における高エネルギー現象を解明する計画を進めている。「すばる」が建設された4000mの高地ではチェレンコフ光量が平地の4倍多くなる。そこで「すばる」の主焦点に、光電子増倍管(PMT)を約50本使用した視野角1度のガンマ線カメラを取り付け、カメラからの信号を扱う電子回路・データ収集用計算機を用意してガンマ線天体を観測する。この装置は、現在、共同研究者の谷森達が代表となり推進している特定領域研究[高エネルギー天体]の計画研究Bで建設中の大口径チェレンコフ光望遠鏡で使用されるPMTモジュールから構成されるガンマ線カメラ・電子回路およびデータ収集系と原理的には全く同じであり、この重点領域研究で開発を行なった経験が活かせる。しかし、「すばる」の主焦点に取り付けるため、特定領域研究とは一部異なる規格の装置の製作が必要となった。具体的には、PMTモジュール、ブリーダ、カメラボックス、GPS時計、ディスクリ・サム回路、トリガー回路、小型データ収集系、格納用ボックス、ケーブル一式の製作、購入が必要となる。本研究の予算では主にガンマ線カメラ用のPMT、信号処理回路とGPS時計の部品を購入した。また、CAMAC・NIMビンおよびデータ解析用ワークステーションなどは、他の予算を通じて購入した物品を使用して、現在システムとして組上げて試験を開始している。ガンマ線カメラを「すばる」の主焦点に取り付けるにあたっては、国立天文台の担当者と数回にわたって詳細な打ち合わせを行い、観測スケジュールについても協議を重ねており、他の大型観測装置の観測と衝突しないように準備している。
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