研究課題
基盤研究(C)
次世代リニアコライダーのためのマルチバンチビームエネルギー差補正方法に関する開発研究が高エネルギー加速器研究機構内のATF(Accelerator Test Facility)において行われている。本研究では、最近特に有望視されている位相変調方式マルチバンチエネルギー補正システムについて開発研究を行った。このエネルギー補正方法は各加速管でマルチバンチビームのエネルギー差を補正できるため、dispersionやchromaticな効果から生じるエミッタンス増大を最小限に抑えることが可能である。平成9年度、クライストロン出力の高周波を合成する結合器などを製作し、ATFリニアック上流部の高周波ユニットの導波管構成を組み変え、2本のクライストロンを用いた位相変調方式のハイパワー試験を行った。平成10年度、位相変調器のコントロールパルスに任意波形生成器を用いるなどのローレベル系の改良などを行った後、6月にATFリニアック中流にビームエネルギー診断用のシケインを設置しマルチバンチビーム実験を行った。クライストロン出力の位相変調速度を変化させ、加速管入力の高周波を振幅変調することによって、加速管でのマルチバンチビーム(20バンチ)のエネルギー利得を変化させることに成功した。これにより、位相変調方式によるマルチバンチビームエネルギー補正が可能であることを実際にビームを用いて実証することができた。本研究より、将来のリニアコライダー建設において位相変調方式がエネルギー補正システムとして利用可能である事や今後開発が必要である構成要素などを示すことができた。
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