前年度の調査より、8インチウェハーのプロセスを単独に行うことは、本研究の規模ではコスト等から不可能であることがはっきりした。そこで、既存の検出器ユニット(5cm長、4インチシリコン基板より製造されたもの)を、4枚接合して、24cm長の大型検出器を組み上げる事を目指した。この接合における様々なノウハウを以下の諸点について開発した。 1) 接合する検出器同士を、精度よく組み上げエポキシ接着剤で固定する。そのための治具の試作した。検出器ユニットを真空吸着できる装置をスライドブッシュで組み合わせることで、再現性のよい組立治具が実現できた。また適量の接着剤を塗布するためのロボットの使用も行い塗布プログラムの最適化を行った。 2) 接合された検出器同士の力学的構造解析と、適切なリブ構造などの設計を行った。結果的には、検出器の背に2枚の梁を渡す方法が、簡単でありながら最も効果的であると結論した。検出器物質の量を最小とするための、使用物質の検討も併せて行い、物質量、熱膨張係数、機械的強度の観点から、0.5mm厚のボロン板材(95%)に炭素繊維で補強を加えたものを新たに開発、使用した。 3) 検出器の電気的接合のためのボンディング方法は、現在のところやはりワイヤーボンディングが最も効率が良かった。両面検出器のワイヤーボンディングを行うために、特殊な治具を新たに試作した。 こうして作られたプロトタイプ検出器の総合性能は、赤外線レーザーなどによってテストが行われ、位置分解能、ノイズ特性、検出効率などの点で、十分満足できるものとなった。
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