大口径のシリコン検出器を考えるとき、考慮すべきなのは当然のことながら読み出しのチャンネル数が厖大なものとならないことが必要である。従ってその構造は、ストリップ型のシリコン検出器であって、その測定ピッチが比較的大きなものが最も好適と考えられる。本研究では大きな測定ピッチ(〜100ミクロン以上)のシリコンストリップ検出器が持つべき構造について、以下の諸点について考慮した。 1) 広いピッチにもかかわらずシリコン内での電荷の収集効率が良いこと。 2) ノイズ特性が優れていること。 3) 位置測定精度が測定ピッチのに比して十分良いこと。 以上を条件としてデザインの検討を行うと、広ピッチのn型ストリップとその間に埋め込まれたp型ストリップ(p-ストップ)の構造が、大口径シリコン検出器にとって最も好適であるとの結論が得られた。 関連企業に対する調査では、8インチウェハーのプロセスを単独に行うことは、本研究の規模ではコスト等から不可能であることが明らかとなった為、民生品として利用できる最大級の検出器ユニット(5cm長、4インチシリコン基板より製造されたもの)を、複数枚接合して、20cm級の大型検出器を組み上げる事を目指した。この接合にいおいて開発したノウハウは以下の諸点である。 1) 接合する検出器同士を、精度よく組み上げエポキシ接着剤で固定する。そのための治具の試作・接着剤塗布ロボットのプログラム開発。 2) 接合された検出器同士の力学的構造解析と、適切なリブ構造などの設計。検出器物質量、熱膨張係数、機械的強度の観点から、0.5mm厚のボロン板材(95%)に炭素繊維で補強を加えたものを新たに開発、使用した。 3) 両面検出器のワイヤーボンディングを行うために、特殊な治具を新たに試作した。 こうして作られたプロトタイプ検出器の総合性能は、赤外線レーザーなどによってテストが行われ、位置分解能、ノイズ特性、検出効率などの点で、十分満足できるものとなった。
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