本年度は基板材料の選定を行い電極基板の試作を行った。現在の産業界の動向としてはカプトン等のポリイミドが最適であるという結論に達し、ポリイミド基板+銅電極というFPC(フレキシブルプリント基板)に広く用いられている組み合わせを採用することにした。ポリイミド基板上へのマイクロストリップ形成には我々の要求を満足する可能性のある方法がいくつか存在することが分かった。その内から本年度は三件の試作を行うことにした。 二件は通常のFPCを製造するためのフォトリソグラフ技術によるものである。要求精度の関係から、フォトマスクには安価なフィルムマスクではなく比較的高価なガラスマスクを用いた。但し、ガラスマスクを用いても我々の要求精度は一般的な保証精度を超えるものである。これら二件の試作には基板材料にいくつか違いがある。また、それぞれ異なる企業に製作を依頼しているためリソグラフ技術にも違いがある。これらの違いが電極性能にどのように影響を与えるか興味深い。電極の試作は終了し、今後、製作された電極の寸法精度、表面形状、電気的特性、及びそれらのばらつきについての測定を行う予定である。 残り一件は超精密切削技術を用いた機械加工によるものである。この試作は本研究機構工作センターとの協力で行われている。この方法は非常に先進的なものでマイクロストリップ電極の形成方法としては試みられたことはないが、これまでの工作センターの経験と技術蓄積を考慮すると非常に有力な候補の一つと考えられる。本年度は基板材料と加工に必要とされる超精密工具の購入、及び加工装置のセットアップ等を行った。今後、実際の加工を行い上記二件と同様の測定を行う予定である。 この他にもジェットプリント技術やTAB技術の応用など有望な技術の存在を知ることができたが、試作までには至らなかった。
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