このプロジェクトではB中間子の輻射崩壊に対する2ループ補正を自動計算システムGRACEを用いて計算する。このため計算の構造を明らかにするために今年度は、まずb→sγ過程の最低次の計算から行った。ただしこの計算自体は稲見・林によって既に計算されている。共変ゲージでは10個の1ループのダイアグラムが寄与し、ユニタリー・ゲージでは4個である。本計算では、ループ積分の単純さから前者で行った。我々は、ここ数年来GRACEと呼ばれる摂動論における自動計算システムを開発して来た。既に、いくつかの1ループ過程も計算してきたが、多くはエネルギーフロンティアにおける散乱過程であったため、クォークの混合を無視する近似を行って来た。しかし、ここではこの小林・益川行列が本質的なので、まずGRACEシステムにその導入を行った。その間、システムの検証として最低限必要である。上記最低次の計算を解析的に行った。この計算では、すべてのクォークの質量が有限に保たれた。稲見・林の計算ではクォークの質量を無視する近似で計算されている。このためその近似が良いかを知る必要があったためである。また、Wボソンの共変ゲージ変数が残されており、これを変化することで、計算結果のゲージ不変性を検証した。小林・益川行列のユニタリー性がその不変性を保証している。現在、同様の計算をGRACEシステムでも再現中である。この過程に対する高次補正となる2ループ図の計算はこのGRACEシステムで行う。今後は、2ループ図の計算、特に繰り込みの具体的方法について考察を行う。なお、ここでの計算は摂動論によって行われているが、現実にはB中間子の崩壊であるために、非摂動効果は無視できない。従ってこの効果をどう取り入れるかの検討も必要である。
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