本研究は、B中間子の輻射崩壊過程のb→sγに対する2ループ補正を計算することが目的であった。近年、この過程に対する電弱理論による補正計算の必要が説かれており、本研究ではこの点に重点を置き研究を遂行した。電弱理論では関連する粒子の数が多いため、膨大な数のファインマン・ダイアグラムの計算が必要になる。このため、本計画では、自動計算システムGRACEの機能を拡充し、2ループ図を計算することとした。具体的には、以下のことを達成した。1)小林・益川行列のGRACEシステムへの導入。その結果得られた2ループ3点非既約ファインマン図は相殺項をあわせて4010個であった。2)2ループ図計算のための手順の確定および整備。数値計算の数を減らすために、GRACEシステムを改良し、遷移行列ではなく、振幅を計算するようにした。この改良により全部で4010個の関数を数値積分をすればよくなった。また、比較検討の結果ファインマン積分の表式として木下・シュビタノビッチ表式をとることにした。この表式ではファインマン図のトポロジーごとに計算準備が異なる。4010個のグラフは8種のトポロジーに分類され、これらすべてのトポロジーに対する計算手順を確定した。また、この過程における紫外発散項の解析を行い、繰り込みについて議論を行った。3)一部のトポロジーに関して数値計算を実行した。
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