本研究の目的は、単一ヘテロ接合に実現する2次元電子プラズモンのエバネッセント波に伴う近接場域の電磁場パターンを明らかにすることである.これは最近注目を浴びているニアフィールド顕微鏡をこのエバネッセント波を用いて実現できないか?、という着想から出発した.今年度は、これまでの研究の把握を行うとともに、エバネッセント光を放射光へ変換するために表面微細加工して付けた金属的(誘電的)グレーティングの役割に注目して、AlGaAs/GaAs単一ヘテロ接合について、次の2点の研究を行った. 1.2次元プラズマ励起に伴う面内電場パターンの計算 表面金属グレーティングゲートに電場印加した2次元電子系からの共鳴ラマン散乱実験により、波数の関数として、プラズマ分散関係の準振動的挙動が観測された.我々はこれが横方向密度変調に起因すると考え、そのプラズモン分散関係とそれに伴う電場、誘導電荷パターンの計算を試みた.横方向電荷密度超格子のプラズモン分散関係として実験と矛盾しない分岐ギャップの出現を見い出した.今後は本題の界面に垂直方向に沿った電場パターンを明らかにする. 2.2次元プラズマ励起からの遠赤外線放射 遠赤外域の固体光源として半導体ヘテロ接合における2次元電子プラズモンからの放射に注目する.周期が数μmの金属的および誘電的グレーティングを介するホット2次元エバネッセントプラズモンからの遠赤外線放射スペクトル強度とその偏光特性を明らかにした.
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