研究概要 |
本研究は、PbI@@S22@@E2,CUCl等の半導体結晶を用い、励起子ポラリトンの緩和時間やポラリトン間のコヒーレントな相互作用が、励起子分子生成効率に及ぼす効果を調べ、励起子間相互作用を支配している量子過程を明らかにすることを目的としたものである。これまでに得られた主な成果の概要は以下の通りである。 励起子ポラリトンの相互作用による励起子分子生成において、ポラリトン間のコヒーレントな相互作用とインコヒーレントな衝突による寄与を分離観測することを目的として、PbI@@S22@@E2の偏光選択励起による励起子分子発光の励起スペクトルを調べた。励起子分子2光子共鳴遷移はポラリトンのコヒーレントな相互作用であり、円偏光励起では分子は生成されない。しかしPbI@@S22@@E2の励起スペクトルでは、円偏光励起でも相当量の分子発光が観測された。PbI@@S22@@E2のように励起子分子束縛エネルギーが小さい場合には、励起子共鳴の低エネルギー側でも散乱を受けたポラリトンのインコヒーレントな相互作用による分子生成が高い効率で起こることが明らかになった。 次に、励起子分子束縛エネルギーの大きいものとして典型的なCuClの場合を比較した。エネルギーの異なる2つの光を用い、励起子分子2光子共鳴吸収の円偏光依存性をポンプ・プローブ法により測定した。この場合には、励起子共鳴エネルギー(E@@S2T@@E2)の極めて近傍まで、分子遷移選択則がよく成り立っていること、E@@S2T@@E2より5meV程度近接した領域から、散乱によってコヒーレンスを失ったポラリトンによる励起子分子生成が生じることが明らかになった。
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