研究概要 |
高圧力下にある氷I/水の系において、氷結晶の平衡形を融解曲線に沿って調べてきた。その結果、系を加圧して融点を下げたとき、約1600bar,-15℃で平衡形は円盤状から六角板状に変化することを明らかにした。これはc軸に平行な結晶面は等方的な荒れた構造から、平らな特異面に変化したことを表し、プリズム面のラフニング転移が生じたことを示す。更に成長形と融解形にも着目したところ、成長形、平衡形、融解形の間には上記ラフニング点の近くでは明確な違いがあることが分かった。平衡形が円盤状でも、成長形と融解形はそれぞれ六方対称的な異方性を示す。しかも両者の方位は30°だけ違っていた。 系の温度を一定にして、氷が成長も融解もしない、一定のサイズを保持する平衡圧力を測定した結果、氷/水共存曲線(融解曲線)上に不連続が存在し、これが約-15℃に相当しラフニング点の値とよく一致していることを見出した。融解曲線の不連続性とラフニング転移を関係づけるのは理論的にむずかしい。氷/水界面のラフニング転移は2次の相転移であり、潜熱を伴わないために融解曲線には影響を与えないはずである。界面ではなく、バルクの水や氷における何らかの相転移に関係している可能性もある。 上記の平衡形は厳密な意味での平衡形ではない。1日程度の時間スケールでは少し成長しているのが光学顕微鏡のレベルでわかる。その代わり、平衡に非常に近い成長形と融解形はラフニング点の近くでは非対称な形になることが分かった。融解曲線上の不連続点と結晶形の非対称は、ラフニング点近傍での特異な現象を反映したものと推定する。
|