強誘電体や強弾性体に外部電場を印加したり温度を変化させたときの表面の応答を原子間力顕微鏡(AFM)により調べているが、本年度の成果は以下の通りである。 (1) 3酸化タングステン(WO_3)表面のAFM測定 本物質では室温で単斜晶系と斜方晶系の状態に関係した2種類の分域が共存している。2つの分域を1つづつ独立に室温で可視化した。次に共存している状態も可視化した。 (2) 3酸化タングステン(WO_3)表面の温度変化によるAFM測定 液体セルと呼ばれる特殊な装置に液体として氷を入れた冷水を流して試料の温度を下げることにより、三斜晶系への相転移点(17℃)通過させて、三斜晶系における分域を発生させてそれを可視化した。単斜晶と三斜晶、三斜晶と斜方晶の2つの共存するする状態を可視化した。以上の共存状態の分域の間には相互作用が存在するが、以上のような共存状態での分域境界の表面起伏は、それが独立に存在する場合とは異なることが確認できた。これは分域間の相互作用を表しているものと考えられる。 (3) その他の測定 この他、チタン酸バリウム(BaTiO_3)表面の電場印加による分域境界の表面起伏の変化、燐酸ネオジウム(NdP_5O_<14>)の分域境界の拡大図、急冷法でガラス化したPbTiO_3酸化物強誘電体の再加熱による表面形状の変化などを可視化することにも成功している。
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